白石城の外堀内にある武家屋敷
片倉家中武家屋敷、旧小関家は、宮城県指定文化財のひとつです。現在、この周辺の多くは住宅地となっていますが、旧小関家が建つ「後小路」は、白石城の北側、三の丸外堀にあたる沢端川に面した町並みで、かつては中級家臣(家中)の屋敷が立ち並んでいたエリアでした。

「家中」とは?
「家中(かちゅう)」とは、武家社会における家臣のことを指します。日本は11世紀から19世紀まで、武士階級が政権を担う封建社会であり、武士=武家が主導する社会において、その家臣たちを「家中」と呼ぶことがありました。特に、現在の宮城県にあたる仙台藩では、一般的な「藩士」という表現ではなく、「家中」という語が用いられていました。

300年の歴史を持つ古建築
18世紀の古地図『白石城下絵図』には「小関右衛門七」との記載があり、そこから旧小関家の存在が確認されています。また、修復のために解体された際、柱などから「享保15年2月12日(1730年)」と記された墨書が見つかり、同家屋が約300年前の古建築であることが明らかになりました。
その平面形状や構造技法は非常に素朴で古風であり、仙台藩における250年の歴史を持つ武家住宅の様式とほぼ変わりません。農民住宅を基盤にしながら、次第に武士住宅としての体裁を整えていった、過渡期の建築様式をよく表しています。

簡素ながら趣ある空間構成
沢端川にかかる土橋を渡り、簡素な切妻造の棟門をくぐると、鬱蒼とした庭樹に囲まれた主屋が姿を現します。主屋は茅葺き屋根で構成され、間取りは極めて簡素です。正座敷・納戸・茶の間を配した「広間型三間取り」と呼ばれる形式を採用しています。
• 正座敷:格式ある「おもて座敷」として、身分の高い来客を迎える空間。
• 納戸:貴重品や衣類などを保管する収納スペース。
• 茶の間:囲炉裏を備え、家族が食事や団らんを楽しむ畳敷きの部屋。
また、棟門をくぐった後、正面にある土塀を折れて進むと、台所口(表出入口)へとつながる動線が確保されています。

自然と調和する静寂の空間
屋敷の両側には鬱蒼とした庭樹が生い茂り、前面および側面には清らかな沢端川の水が流れています。自然と建築が調和し、景観的にも非常に優れており、静寂で趣ある空間が広がります。
この武家屋敷は、女優・吉永小百合氏が出演したJR東日本「大人の休日倶楽部」のポスターにも登場したことがあり、知る人ぞ知る名所となっています。
